あなたを夢みて

リサ・クレイパスの古典?なのでしょうか、彼女の初期の作品でとても有名なヒーローデレクの登場です。PBでも持っているので、再読な訳ですが、やはりアンチヒーロー的な魅力は特異な存在に映りましたね。
ストーリーは、どちらかというと少女漫画ちっくな、クラシックな展開です。

「マチルダ」の作者であるサラは次作の情報収集のためにロンドンの貧困街を歩いていたが、そこで男たちに襲われている男性を助ける。助けた男性は有名なとばくクラブオーナーのデレク・クレーブンで、デレクを助けたことで賭博クラブの取材をすることができることになった。
社交界の女性と違い、自立して人に悪意のないサラはどんな人にも礼儀正しく誠実の親切にふるまう。貧困街で娼婦に産み落とされて人のお情けにすがるようにして成長し、裕福になるためにあらゆる手段を使ってきたデレクとは住む世界がちがう存在だったが、互いに魅かれあうようになっていく。
しかし、デレクは自分にとって大切な人ができることを良しとせず、サラは故郷に帰って婚約者と結婚すべきだとサラを説得する。デレクの必死の説得に故郷に帰るサラ。
恋人ペリーとの関係を深めようとするが、ペリーの母との確執、ペリーが自分の世話をするだけの妻をほしがっておりサラの仕事を認めないこと、デレクと共有したような熱い抱擁、情熱的なキスを求めても求めるサラのほうがおかしい扱いをされることなどから、ペリーと結婚しても幸せにはならないと決意したサラは、デレクとの共通の友人リリーの誘いに応じてある舞踏会にでかける。
そこでは、デレク、デレクに捨てられたアシュビー卿の妻ジョイスも来ていて、サラに夢中はデレクへの復讐にサラを友人に襲わせるのだった。
間一髪のところでサラの窮地を救ったデレクだが、なんとしてもサラを結婚させたがる。そのために結婚候補になりうる独身男性のリストを渡してだれでもいいから選べ!と強要するのだが、サラはYESとはいわない。結婚すれば妻は夫のものとなり、その夫をだれが脅しても妻に対する自由は奪えないことをサラがさとし、サラの愛する人としか結婚したくないことを理解したデレクはサラとの結婚に踏みきる。
結婚後、二人は幸せに暮らすが、リリーの義理の弟ヘンリーの誕生パーティーの夜、デレクのクラブが家事になり・・・・

 
特に美人でもなくただただ人のよいサラ、ですが年老いた両親に生まれたせいもあり、自分の頭で考えられる女性に育てられます。そして善悪の区別や自分の身分にあった交友関係、身分や財産に惑われることなく人に見られる人間に成長したわけです。もちろん、むちゃ?なのか勇気あふれる?行動もとれて、貧困街で襲われたデレクを助けたりもできるわけです。
彼女のメガネをとったり、髪をおろしたりするとデレクが絶世の美女を相手にするようにあつかうところが、少女漫画チックに感じました。
デレクは、決して紳士ではなくいつまでも貧困街からの成り上がり者です。
悪として魅力にあふれ、人の妻を寝とってもとくに悪気は感じず非常にドライにこなしていきます。人と親密な関係を築くことを恐れ、そういう関係になりそうな相手はさっさと遠ざけるのが常ですが、サラだけは遠ざけることができませんでした。
そして結婚してからはサラこそ自分の生きていく理由だと大切にして、火事で亡くしたと思いこんだときには自分を失うくらいにうろたえます。
悪ですから、かっこいいといってもアンチヒーロー的な魅力にあふれています。
誰にも飼いならすことができない野生動物のようなあらあらしさです。
でも、そういう一見手に負えないような男性をごく普通の平凡な女性がいとめていくところにこの話のおもしろさってあるんですよね。そして一度惚れこんだら、ありえないくらいに大事にするデレクの姿は、旦那さまとして理想的。
い~い話です