恋はあまりに突然に

こういう楽しい本をどんどん翻訳してほしいです。
RITA賞のシングル・タイトル・コンテンポラリーのファイナリストだそうです。
スーザン・ドノヴァンの本の中では比較的(一番)新しい本のようです。
おいしいところ翻訳してくれますね。

上院議員を目指すジャックは、数年前の女性軽視な発言が元で女性からの票獲得に大きなハードルを持っていた。そこに作戦参謀のカーラが、偽の婚約者を雇用する話を持ってくる。最初は抵抗するジャックだが、それ以外にジャックの評判をよくする方法はない、と迫られしぶしぶ承諾する。

その婚約者となるサムは、21歳でできちゃった婚後、ひも状態の夫と子供を養いながらギリギリの線で美容師としてやってくること10年。10年目の結婚記念日に、ありえない贅沢なディナーとともに3人目の子供を授かり、と同時にろくでなしな夫は自分がゲイであることを自覚したとしてサムと子供たちを捨てて出て行ってしまった。心が砕けちっても冷蔵庫がいっぱいになるわけではなく、請求書もくるわけで、ただひたすらに働き、子供を育ててきた。前夫ミッチからの養育費はそれ以来一度も受けったことはなく、長女は14歳になり反抗期、長男は13歳になりどもりの癖がぬけずいじめにあっている。3歳の次男はおむつがとれず保育園から追い出されて、これからどうやって生活していけばいいのか、借金するしかないのか、途方にくれることもしばしば。親しい顧客で、飲み仲間のカーラからある提案をされて、よくよく考えた結果、子供たちの将来のために偽の婚約者の仕事を引き受けることにした。それに6か月、仕事を休んで子供と一緒にいることで、忙しさにかまけて気づくとすっかり大きくなってしまった子供たちとも絆をもう一度作りたいとも思っていた。

そしてジャックとサムは人に見られるためのデートを開始する。
3人の子持ち、でサムに対して引き気味だったジャックだが、実物のサムをみてそのかわいさ、素直さ、思いやりなどある意味人として当然の素質に本当にサムが好きになっていく。
サムもジャックが世間でいうほどひどい男ではないように感じて、そのハンサムさ、サムやサムの子供たち、サムの親友などにも気づかってくれる態度にも、今まで男なんて頼りにならないし、信じられないと思うサムの心のガードを少しづつ崩していく。36歳で子育てにも人生にも疲れているサムを、絶世の美女のように扱ってくれるジャック。サムの母親としての気づかい、優しく包容力のある態度に自分の母親には愛されてこなかったトラウマのあるジャックはいやされていく。
2人は偽の婚約者から、2人の間でだけは本物の関係になり、ジャックは予備選挙以降も恋人として、彼の子供の母親としてとどまってほしいことをサムに頼む。予備選挙が終われて2人の関係を正式にオープンにできる。そんなとき、サムの前夫ミッチが現れ、ミッチの子供をジャックの養子にするのは耐えられないとサムに泣きつく。あまりのしつこさに婚約者の契約の話をしてしまうサム。ミッチはろくでなしの信用できないやつなのに!と親友のモンテにも叱られる。そして予想は的中。ミッチはサムにもジャックと別れて、金を渡さなければ真実をばらすぞ!と脅迫し始める。

 
いい話です。いろいろ深刻になりそうなシチュエーションもサラリと書いて、楽しく読める。
娯楽としては最高ですね。
脇役も個性豊かで憎めないキャラばかり!
ジャックに振られた敏腕ニュースキャスター・クリスティ、クリスティを追いかけるブランドンのコンビは、悪役なんだけど憎めない!
モンテは毒舌だけど、こういう親友がいたらいいね。というタイプ。
モンテの子、サイモンはサムの子供たちと同化しちゃってるけれど、サイモンがいたからモンテとサムの友情が深まったんだろうなぁというきっかけにみえる。
サムの子供たちはそれなりにトラブルを抱えてはいたけれど、根がいい子なのがわかる素直さをもっていて好印象。
とげとげしかったジャックの母も、実は双子の子を出産しすぐに死亡したことから立ち直れず、ジャックの面倒をみれなかったことをずっと悔みつづけ、心の中ではあの亡くなった双子が生きていればと思いながらも表面上は政治家の妻として弱みを一切見せずにきた態度は、りっぱというか悲しいというかね。
ダメ男ミッチにしても、芸術家魂なのか、勢いがあったのかかってに出ていちゃってから相当苦労して、きっとサムと別れたことを後悔したんでしょうねえ。子どもに会いたいとかいってもお金を手にしたとたん、やめたはずの薬をはじめちゃうくらい本当にダメですが、悲しいくらいダメなので、かわいそうになってくれる。救われる道はなさそうだしね。
そしてヒーローとヒロインのキャラのバランスも最高!
ジャックについてはこんないい加減さで上院議員になっちゃっていいのだろうか?って思える発言があちこちにあるけれど、憎めないキャラですね。いい意味でアメリカ人らしい、タイプなんだろうなあ。
そしてサム。私好みの苦労に苦労を重ねたキャラで、前向きで、明るく、人情味あふれるタイプ。人生の苦労のかいあって、最高にセクシィーでおお金もちでサムだけを情熱的に愛してくれる人と出会えてよかった!いいラブ・ストーリーでした。