金色の巫女に捧ぐ

いつもただのロマンスではない作品のメアリー ジョー パトニーですが、
これまでの翻訳作と比べると、結構ふつう。
でも、ヒロインとヒーローの心情的な動きが細やかに描かれていて、
とてものめりこんでよめて楽しかったです。
そういう意味では、やはりメアリー ジョー パトニーはすごい作家さんなのかもしれません。

落馬事故で右足に大けがを負った公爵令嬢サラは、ふつうの結婚は諦めていた。
夫と一歩引いたような関係をもとめ、かなり年上で父の友人でもある資産家、ウェルドンとの婚約を決めたのも、彼にはもう娘もおり、情熱よりも礼儀と信頼関係からなる関係を結べるとおもったからだった。そんな関係であれば、サラの醜い足も、支障にはならないだろう。。。
サラの大事な従兄ロスの紹介でカフィリスタンの皇子ミカールに出会ったのは、そんな婚約間もないころだった。見たこともないほど美しい緑の目をした異国の男性。強引でいて神経細やかに、サラを大切に扱ってくれる男性だった。ロスからミカールが社交界になれるのを助けてほしいと頼まれたこと、未来の夫も重要な商売相手としてサポートを進めたこともあり、サラはしょっちゅうミカールと時間をともにした。そんな中で、じょじょに彼に魅かれていった。何よりも彼といると今までできないと思っていたことができる気持ちになるのだ。落馬事故からそんな風に人生に希望を持つことなどなかったのに。。。
そしてある舞踏会の夜、ミカールに情熱的に求められている最中に、父と婚約者が部屋に入ってきて、サラの婚約は破棄になった。自分の倫理感を裏切ってしまったことに深く反省するサラだったので、翌日求婚してきたミカールの申し出は断った。だが、彼をみていると彼を愛し始めている自分に気づかされた。ミカールは異国の皇子。。いずれは自分を置いて自国に帰ってしまうかも。。という不安に襲われたサラだったが、熱心にサラを求め、説得するミカールを見て、彼がこの国をさるまでであろうと、自分の幸せのために生きる決意をする。
だが、ミカールの求婚は情熱だけに基づいたものではなかった。。。。

 結構シンプルな話なのですが、キャラはみんな際立っていて、飽きさせません。ヒロインのサラも、頭が切れるし自分の意思、ポリシーに沿った生き方をする一本気がとおった人で、そのために自分がつらい思いをしてもポリシーをつらぬくところは、えらい!と思いました。復讐に生きるミカールですが、サラを大事にし、でも自分の復讐を遂げるために頑張りますが、最後は折れてくれてよかった。そして侍女と秘書のカップルも、人生の苦渋の中でも失わなかった人としての輝きを放ちながら活躍してくれます。
みんな完璧でなく、誰もが何かしらの過去の傷を負った登場人物ばかりですが、そこがよかったのかも。