子爵の口づけに目覚めて

フローラ文庫ですが、なんだかヒストリカルは面白いですね。
コンテンポラリーは、ちょっと・・な作品が続いていただけに、今回のは期待以上に面白かったです

 ウェイクフィールド領の新しい領主ジョンは、財政の立て直しのために領地内にただですんでいる者たちの家賃見直しをおこなった。その結果、長年領主のために働いてきたが今はもう働けないものや、シングルマザーで収入のないものなどが立ち退かなければならない事態になってきていた。
前牧師の娘エマもまた同じ境遇の一人だったが、村人から依頼されて、無慈悲な立ち退きに対する抗議をしにジョンのところにやってきた。
放蕩の限りをつくしながらも満たされない焦燥感をもてあましていたジョンは、教師のようなエマの態度に圧倒されながらも、その潔さと高潔さにひどく引かれた。
そして少し意地悪な気分とエマをぎゃふんと言わせたい気持ちから、エマが自分を楽しませてくれたら立ち退きを撤回しようと持ちかける。

 
父親に非難され続け、見下されて育ったジョンは皮肉や傲慢で人を思いやる気持ちなど少しもないいやなやつです。最初はからかい半分でちょっかいをだしたはずのエマの他人のために一生懸命になる姿、抑圧された情熱を解放する美しい姿、そしてジョンを大事にしてくれる姿にジョン自身も変わっていきます。他人を思いやり、自分本位で行動しなくなり、そしてなぜか自分自身が今までよりも幸せに感じるようになります。

エマはジョンを愛するようになりますが、ジョンが自分と結婚してくれるとは全然考えていません。自分はこのまま独身のまま老いていくのだ。と静かに自分の人生を達観し、ジョンとの情事はその長い時間を埋め合わせるための大事な思い出作りのように感じています。
ジョン自身も結婚について拒絶感を感じながらもエマ以外の人と一緒にいることに魅力を感じなくなり、以前からの婚約者候補も愛人とも距離をとるようになります。
愛人に・・・・ともジョンも考えました。しかしエマは愛人になるほど落ちぶれたくはない。と拒絶します。この二人の関係は、本当に微妙で、結構後半までどうなるのかなぁと気をもませてくれました。
エマはとにかく他人のために一生懸命な女性で、牧師の娘として立派であろうとすればするほどジョンと奔放に走っていくようで、なかなか面白い女性でしたね。

全体的に性描写が露骨ですから、好き嫌いもあるのでしょうが、根底にはピュアは恋愛物語なので私的にが好感的によめました。
ただ、夢中になったか?再読するか?ていうと、うーん。いまいち。