パッション

官能と清純の物語ってあとがきにありましたが、確かにそのとおり。
官能的なシーンが、多いです。
でも、同じくらい愛を告白するシーンも多い。
不思議なお話です。

牧師の娘のパッションは、最初の結婚で男性に対して幻滅していた。夫に愛されず、子供も授かることもできずに終わった結婚。間もなく喪が明けようとするパッションは叔母の家に滞在しロンドン万博を楽しんでした。その水晶宮で危ないところたくましい男性に助けられる。男性の瞳は目を見張るような碧。レモンバーベナの香りをさせた美しい男性は、パッションの欲望に火をつけ、そしてすぐにパッションが欲しがっていたものを与えたくれた。
二人は翌日も水晶宮で会い、巨大な壁の後ろで愛を交わす。
名前だけを知り、マークはうわべと自分の身分しかみない女性ではなく、身返りも何も求めずただ自分を受け入れてくれるパッションに新鮮さを感じひかれていき、パッションは自分をただ求めてくれる実感を与えてくれるマークにひかれる。
牧師の娘として厳格に育てられたパッションにとっては快楽のためだけの関係は本来であれば許されないはずのものだったが、自分が渇望していたものを与えてくれるマークを拒みきれない。他人のような体の関係以上のものを求めない(=結婚とか)マークに少し悲しくなりながらも、自分も結婚はもうする気はないパッションはパッションはあと2か月だけ、この関係を続けようと思うのだった。
そのころ、パッションの従妹のシャーロットに急に伯爵との結婚話が持ち上がり、強欲で圧力をかけ続ける母の影に隠れておびえていきたきたシャーロットが少し人らしく、強い態度を持ち始める。そんな輝くシャーロットの姿に、パッションはマークと共にこの先の何十年かを一緒に暮らす事をを夢見はじめ、あわてて夢を断ち切るのだった。

生まれたときから母に疎まれ、溺愛される弟を遠くから眺めていたマークは、突然弟が父の子ではなく母の不義の結果の子であることを軽蔑する母から知らされる。母はつづけて、その事実をある当時の親友の平民に知らせた手紙が残っており、その元友人にマークと元友人の娘を結婚させなければ弟の出生を明かした手紙を公開すると脅されていることを明かす。そして高圧的にマークに結婚を迫る。今まで、女性と楽しんでいても結婚を考えていなかったマーク。
だが最愛の弟はある貴族の娘と婚約したばかり、貴族の娘が弟マシューが伯爵家の血を引かないという事実を耐えられほど弟を愛しているようには思えない。婚約者から去られることはマシューの心を大きく傷つけるだろう、と判断し、しぶしぶながら母の元友人の娘シャーロットとの結婚を承諾する。もともと結婚にが興味がなかったが、子供をもうけてもよいころあいだと自分を慰めて。

しかし、パッションと出会うことにより、マークは変わった。子供ができないというパッションに事実上伯爵家の血筋を絶えさせる危険もあるにしても、パッション以外の女性とは結婚したくなくなっていくのだった。秘密裏に、マークは問題の手紙を取り戻そうとする。

シャーロットの婚約披露舞踏会で、パッションはシャーロットの婚約者の正体を知る。
打ちのめされるパッション。話をしに訪れたマークは、事実を知らせる。別れるつもりはないマークは密に手紙を手にいれ、シャーロットととの婚約を破棄し、パッションとの結婚を画策している。しかしそれは告げぬまま、とにかく2人の間にある特別な絆を強調する。パッションはすでにマークを愛していて、マークとシャーロットの婚約に心を壊されながらもシャーロットにことも愛しているのでマークはシャーロットを傷つけることを許すうつもりもなかった。

結婚により今までの母の支配から逃れられることに喜びと伯爵夫人としての誇りを持とうとするシャーロットは最愛の従妹パッションに結婚までマークの家で過ごす期間を一緒に過ごしてほしいと懇願する。シャーロットの涙にぬれた懇願に負けたパッションは身を切れらるような思いをしながらマークの家で過ごす。実際、パッションは著しく体調を崩し、パッションの双子の妹たちに介抱されて過ごす。
マークの家でのパッションの部屋には秘密の通路があり、しばしばマークはパッションの元を訪れる。二人はお互いの愛を認識し、今後何があろうとお互いへの愛が変わらぬことを誓いあう。そしてパッションはマークがシャーロットを大切にすることを望むのだった。パッションを手放さなければならないことはマークからすべての希望、生きている意味、感情をとりさるもののようだった。
パッションとの別れをしぶしぶながら了承したマークの元に、ほかならぬシャーロットから例の手紙が手渡されるが、すべてが間違った方向に進んでいてマークには止めようがなかった。

そしてマークとシャーロットの結婚式の朝、新聞に公開されたのは、マークの母が元友人に届いたかどうかもわからぬままになっていた、マシューの出自を明らかにする決定的な証拠をふくんだ手紙だった。

 
確かに露骨なシーンは多いので好き嫌いは別れると思います。が、生まれてから一度も自分のすべてを受け入れてくれる女性を持ったことのないマークと、夫との愛を求めて結婚したはずなのに夫は自分の体を愛さず別の女とは奔放に楽しんでいた事実に打ちのめされているパッションの事情を考えるとそういうシーンがあっても特に違和感はなかった気がします。
パッションとの結婚をのぞみながら、弟のために自分の幸せを犠牲にしているマークの絶える姿、弟に(事実を知っていれば)暴言ともいえることを言われてもじっと我慢するマークは、自分のことだけでなくまわりのことも考えて行動できる大人の男として魅力あふれる存在に見えます。
パッションも、マークの情熱によって夫が自分を愛さなかったのは自分のせいではないことに気づき、将来に明るい希望をいだきながら、希望を打ち砕かれても、公正に生きようとする毅然とした態度はすてきな女性として見えました。

私的意見では、マークの母の不義をさっさと公開させてしまえばこんなことにはならなかったのに。。。と弟思いすぎるマークに少しイライラしいてしまいましたが、まあ、だから話も面白くなるわけですからね、しかたないですね。

脇キャラも、マシュー、ペイシャンス、シャーロット、そしてジョン・クロスマンと魅力あふれる人々がいて、次作がとっても楽しみ。
お気に入りな一冊になりますね。これは。